付属するフルカラーの地図や豊富なデータもその一部であるが、まず挙げられるのは、緻密な設定である。冒険の拠点となるホムレットの街に関しては、地図、概略と歴史、個別の場所に関しての記述、NPC、そして事件をどのように受け止め、どうかかわっているかが記述されている。これらは生きている世界を描くために有用な設定である。敵の組織に関しても同様に、それまでの歴史、様々な構成員の思惑、対立、食い違う意図などが設定され、抽象的で一枚板の”敵”ではなく、それぞれが異なる思惑を持つ集団、あるいは組織を表現している。
次に、それらの設定を活かすための具体的な事件、遭遇などの豊富で具体的なギミックが挙げられる。200ページ以上に渡る本書には、ダンジョンマスターズガイドが示すところの「動的なダンジョン」すなわち、PCの行動によって相手の対応が変化するという生きているダンジョンやシナリオのための仕掛けや遭遇が詰まっている。多岐にわたる遭遇の状況や仕掛け、相手の戦術や置かれた状況の変化は、この上もなく魅力的な冒険を生み出してくれるだろう。
本書は、一つの長くエキサイティングなキャンペーンとして楽しめるだけでなく、自分達でシナリオやキャンペーンを考える際の最上の参考書である。是非本書を活用してD&Dの魅力の真髄を体験して欲しい。 日本語化!このダンジョンズアンドドラゴンズ第三版の冒険シナリオは、値段も高いのですが、内容は非常に多く、丸ごと一つのキャンペーンという感じです。プレイヤーは、4レベルから始めて、14レベルに到達します。原題は、「Return of the temple of elemental evil」です。
グレイホークの世界(フラネス)を舞台としています。この世界観については、「グレイホーク ワールドガイド(邦題)」で詳しく描かれています。確かに、シナリオとしては非常に長いので、息の長いキャンペーンをしたい場合にはもってこいでしょう。D&Dの初心者の人には、まず1レベルから4レベルまでを自分たちで経験してから遊ぶと楽しいと思います。
このシナリオが日本語化したことで、いちいち英語の原書を読みこなす必要がなくなって、より多くの人が楽しめるのではと思います。
必要不可欠な10の呪文、君より高い知性を持つモンスターをプレイする方法、水中での移動と戦闘、迷路と高レベルキャラクターなど、具体的な遭遇例と共に示されたDMへのアドバイスは、これまでとは違った視点で遭遇を考え、デザインする助けとなってくれるでしょう。
また、遭遇レベル1〜22までの具体的な遭遇例は、そのままシナリオに組み込んで使うことも、素材として独自にアレンジすることも可能となっています。状況に合わせた敵モンスターの行動や戦術が書かれた多彩な遭遇(罠や環境との連携や遭遇の状況の活用、幻術呪文の効果的使用)は、目を通して使ってみることで、セッションを豊かなものにしてくれるでしょう。 ただ、高レベルのものは扱いが難しいものも多いため、示されたポイントを自分で解釈して考えてみる必要があるかも知れません。 いずれにせよ、シナリオ自作派の人やD&Dに慣れていない人、初心者DMにとっての価値ある参考書として本書は非常に有用だと思います。